神田 順(かんだ じゅん)
(日本大学客員教授、東京大学名誉教授、建築基本法制定準備会会長、 東京地裁調停委員、 PHDエジンバラ)
JCAABEに期待する
我が国には、自分たちで美しいまちを作ろうとする意識が乏しかったように思う。今のように工業化が進んでいない時代は、家づくりの素材は、その土地で産する自然材によって作られ、結果的に統一的な景観が形成された。明治期に来日した多くの知識人が里の美しさに感動している。戦後、効率的に最低の基準でよいから建築を造ろうということでできた建築基準法が、私有財産権を強調したこともあって、敷地の中だけを考える建築がまちの景観を壊すようになっても、社会制度整備の方向への議論が熟していない。建築の基本理念を国民レベルで共有するには、法整備も必要であるが、建築主と近隣住民、小さなコミュニティ単位で、どのようにしたら美しいまちができ、住み易い環境が形成されるか、計画時点での十分な情報交換と専門家を交えたコミュニケーションが不可欠であると思う。連氏が中心となって新しい法人が誕生する。美しいまちが生活の豊かさを生むまでには時間がかかるかもしれないが、これからの活動に期待する。
野澤 康(のざわ やすし)
(工学院大学教授建築学部長、博士(工学)、技術士、府中市土地利用景観調整審査会会長、相模原市建築審査会会長)
「日本建築まちづくり適正支援機構」への期待
~市民まちづくりの強力なサポート役として~
わが国の市街地は、総じて安全で清潔です。それだけでも他国に比べて素晴らしいことですが、これからの時代には、さらに街並みの美しさ、住み心地の良さ、誰もが住みたくなる(住み続けたくなる)価値の創造などが求められます。
全国各地で、いわゆる「まちづくり条例」が制定され、市民中心のまちづくりを支援する制度インフラは整ってきています。しかし、市民中心と言っても、市民だけではまちづくりはうまくいきません。行政との協働、そして専門家による適切なサポートがあって、初めて良いまちづくり活動が展開できるのです。
新たに設立された「日本建築まちづくり適正支援機構」には、こうしたまちづくりを強力にサポートする専門家集団としての役割を大いに期待しています。これからの発展が大変楽しみです。